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第146回 二酸化炭素排出量を温暖化防止できるレベルに

地球の熱のインプットとアウトプット

去年のグレタさんのスピーチ以来、強く主張され始めた地球温暖化防止だが、
まずどうしたら温暖化を防げるだろうか。

まず地球の熱のインプットとアウトプットを考えたい。
地球に届く熱のほとんどは太陽からの紫外線で、地球から宇宙に出ていく熱のほとんどは赤外線の放出だ。
このインプットとアウトプットの熱量が同じだからこそ、
地球という惑星は恒常的に同じ温度でいられる。

しかし、もしそれだけなら、地球の温度はマイナス18℃になっていた。
つまり「氷の惑星」のはずだった。

そこに二酸化炭素が存在していたので、アウトプットの赤外線の熱の放出を遅らせ、
時間差をつけて放出するようになってプラス15℃の「水の惑星」にしたのだ。

そこに大量の化石燃料の燃焼によって、かつての二酸化炭素を大気中に増やしてしまった。
それはさらに多くの赤外線の宇宙への放出を遅らせる。
それが今の地球温暖化の主因だ。

例えば発電所から莫大な熱を海洋に放出していることが温暖化と言われたりするが、
大きさの違いを知ってほしい。
太陽からの熱は「1秒あたり約42兆キロカロリー」で、
これはたった一秒分で世界中で使っているエネルギー(石油や電気など)の二万倍以上になるそうだ。
それに対して発電所の排熱など、小さすぎて比較にならない「誤差の範囲」にしかならないのだ。

大きいのはインプットとアウトプットの熱量で、
その量は同じだから全く気付かない赤外線のアウトプットに注意する必要があるのだ。
二酸化炭素はそのアウトプットの赤外線の時間差を起こすことで地球を暖めてしまう。

どれだけ二酸化炭素の排出を減らせばいいのか

それではどれだけ二酸化炭素の排出を減らせばいいのか。
発生した二酸化炭素の中で、55%は植物の緑や、海洋にある海藻によって吸収されている。
残りの45%が大気中に残って温暖化を起こしている。
つまり大雑把に言えばその45%を排出しなくなればいいのだ。
その二酸化炭素を排出しているのは私たちも使う「電気」だ。
発電するときに化石燃料を使うことで二酸化炭素を排出している。

ただし電気を一番使っているのは「産業」だ。
ここでは家庭などの小口の消費と、産業の大口とをわけて考えよう。

温暖化しない暮らし

家庭の中でも最大排出は「電気」だ。
次に自動車のガソリンや暖房・給湯のガスと灯油が続き、その他に水道やごみの焼却などがある。
そこで大きなものから減らしていくことを具体的に考えてみた。なんと45%減らすことは難しくなくできる。

すべきことは何より「省エネ家電」に入れ替えること、
次に燃費の良い自動車(流行のハイブリッド車ではない)に乗り換えることだった。

なんとそれだけで45%を減らすことができてしまうのだ。
その次に大事なのは家庭の熱源を変えることだ。

電気はヒートポンプ以外に使ってはいけない。
そしてガスや灯油を使っていた部分をバイオマス燃料に入れ替えよう。
木材ならば燃やせば二酸化炭素は出るものの、植林などをしていけば吸収されていくのだ。
これで完全に温暖化しない暮らしが実現できる。

森の補強を

炭素吸収量
木を燃やしても木が育つときにその分の「二酸化炭素を吸収する」と言ったが、
伐採した後、ただ放置しただけでは森は育たない。
効率よく森が育つように人がサポートしてあげなければいけない。

木の種類によって二酸化炭素吸収量は違うし、それ以上に木の樹齢によって吸収量が違う。
その吸収量を最適・最大にしてやるためには、森の手入れをしてやらないと育つまでに長い時間がかかってしまうのだ。

もう一点、植えた木がすべて成長してくれるとは限らない。
植林しただけでは二酸化炭素を吸収してくれるとは限らないのだ。

植えた木を最大限利用する

植林
天然住宅では「くりこまくんえん」を手伝って森の手入れをしている。
年二回、春には植林と皮剥き間伐、晩秋には伐採と薪割りをしている。

森の人たちは冬になると本格的な伐採をする。
木には周期があって、春から夏は育つためにでんぷんを木材に送り込んで蓄えている。
その時期に伐採した木材はでんぷん質が多すぎて、カビやすくなったり虫を寄せやすくなったりする。
だから本物の木こりさんはお盆以降、秋冬にしか伐採しない。

植林する場所ならまだまだたくさんある。
伐採後に放置したままの荒れた山がたくさんあるのだ。
森の手入れをすることは大きな温暖化対策になる。
育ってている限り二酸化炭素を吸収してくれているのだから。

くりこまくんえんでは、「薪」も「木質ペレット」も作っている。
これを暖房に使えばそれだけ排出量を減らせるから二酸化炭素対策になる。
我が家は「電気のオフグリッド」と「ペレットストーブ」も手伝って、
一般世帯の二酸化炭素排出量の実にマイナス80%を達成している。
減らしすぎて他の人の分まで減らしている勘定だ。

産業(大口)の二酸化炭素排出

さてここで分けておいた産業(大口)の二酸化炭素排出の話をしよう。
電気を使っているのは産業がはるかに多いが、電気料金を払っているのは圧倒的に「家庭や小さな事業者」だ。
私たちが支えてしまっているせいで、産業はこれほど無駄に使うのだ。
だから家庭からの最大の二酸化炭素対策は、産業や政府、電力会社を支えないことだ。
だから我が家は独立して送電線を切った。

もしみんなが支えなくなれば、産業の電気料金を上げざるを得なくなり、
カネに敏感な彼らは節電するだろう。
私たちが電気を多消費する産業を支えないことが大切だ。
システムに頼って暮らすのではなく、少しでもシステムから離れることが大切だ。

我が家のオフグリッド実現に役立った「パーソナルエナジー」を作った「慧通信技術工業」が、
新たにリンナイと組んで「エコワンソーラー」を開発した。
熱利用で例外的に効果の高い「ヒートポンプ」を活用し、
給湯のガス消費を節減できる仕組みを作ったのだ加えて必要最低限の電気を自給する仕組みだ。

「卒FIT(固定価格買取制度の優遇買取を終えてしまったこと)」に迷う人は、この採用を考えてほしい。
そうすればかなりの部分の二酸化炭素の排出をなくせる。
「森の補強」と「熱や電気の自立」が温暖化対策を実現してくれるのだ。