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第127回 家は長もちしなくていい?

家の寿命

またある友人は、子が大きくなったら越すと思うので、
長持ちしなくても子どもが大きくなるまでの住まいでいいという。
それなら住宅提示場にある住宅でも買えるかもしれない。

もちろんすでに見た化学物質などの心配もあるのだが、
それを無視したとしてもその家を売って住み替える時、どうなるだろう。

日本の住宅は一般的に異常に短命に作られていて、
建物の価値がゼロになるのに10年から20年、建て替えられるのが30年以内と相場が決まっている。

家は不動産どころか、プラモデルの扱いなのだ。
だから10年を越えて家を売りに出すとき、
その住宅付きの土地は「土地の値段 ー(マイナス) 家の取壊し費用 = 売買価格」となってしまうのだ。

家の価値

築10年の家は真新しい。いわばまだピカピカの家だ。
ところが価値が失われて取壊しにかかる費用が土地代からマイナスされてしまうのだ。

しかもその程度を前提にした建物は、長く使うことが前提ではなく、
一時期住まうことを前提にして建てられてしまう。
ベニヤ板を多用するのも、基礎コンクリートをスカスカに打つのもその寿命なら当然だろう。
まるで政府に原発の安全性を聞いているような話になる。

「万が一のときでも大丈夫ですか」

「家が建っている間に大地震が来ることはないと思いますよ」

となるわけだ。

長寿命で価値のある家づくりは森を守れる

杉の植林をした森
そして建物を短命に建てることは地球上の資源を無駄にする。

家がもしスギで建てられるのなら、
スギが再度使えるまでに育つ50年は持ってくれないと資源が減ることになる。
ヒノキなら同じように100年経たないと育たない。
成長するまでの年数以上に使ってもらえないと資源は減るのだ。

法隆寺が世界最古の木造建築物であることを知っている人も多いだろう。
なぜ持っているのかの理由を知る人は少ない。
あれはヒノキだが、日本に育つ針葉樹には他に見られない優れた特徴があるのだ。

木を切り倒してから、日本の針葉樹は強度が高くなり続けるのだ。
切り倒した木は強度が200~300年強くなり続け、そこまで来てやっと強度は下がり始める。
その強度が切り倒した直後のレベルまで落ちるまでに、1000年近くかかる。

だから法隆寺をメンテした時、木々を取り外すと圧力のかかっていた木は伸びあがり、
再び組み直すことができたのだ。

こんなに使うことのできる素材を持ちながら、わずか20-30年で取り壊してしまうのは資源の無駄だろう。
もっと大事に使えば子々孫々まで使える資源に囲まれているのに。
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