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第144回 卒FIT、電気の前に使えるもの

卒FITに向けて

パーソナルエナジーの粟田さんは、今ガス器具メーカーと組んで、卒FIT向けの装置開発に動いている。

「卒FIT」とは、太陽光発電で家庭で発電した電気を高い価格で買い取ってもらえる
「固定買取価格制度(FIT)」期間(10年)が終わり、買取価格が安くされてしまうことになった。
多くの人が太陽光発電をつけたのが2009年からだったから、
2019年からは次第に買い取られる枠が終わっていくのだ。

ところが同じ太陽光発電パネルでも、事業系が設置した場合には20年買い取ってもらえる。
つまり装置自体の有効期限ではないのだ。
(実際、20年後でも85%以上の出力保証をしているパネルもある)

そうなるとまだ使える電気を、安く売りたくはない。
これを「卒FIT」と呼び、バッテリーを使った蓄電池メーカーなどが、卒FITに売り込みをかけているのだ。

太陽光発電システムの停電時の使用勝手

卒FIT後でも災害時に使えれば、という声もある。
しかし、太陽光発電システム内に蓄電機能がない場合、
停電の時に電気を利用しようとしても、自立運転モードに切り替えなければ使えない。
自立運転モードでは、使えるのは1500ワットまでで、
エアコンのような消費電力の大きなものは厳しいし、空が晴れていなければ発電もしないので、電気は使えない。
使用勝手は限定的なのだ。

充電器をつけていたとしても、自動では切り替わらない。
第143回コラムで述べたように、蓄電にもいろいろと課題がある。

どちらにせよ、電力会社の電気のように自由自在には使えないのだ。

リンナイの「エコワン」

リンナイのエコワン
そこでガス器具メーカーが考えたのが、給湯部分に電気を使うアイデアだった。

お水からお湯を沸かすにはガスがいい。電気には一気に沸かせるようなパワーはないし、料金も高くなる。
しかし温めたお湯の冷めた分を、ヒートポンプを使って利用するには電気の方がいい。
そこで熱効率の高い給湯機である「エコジョーズ」に加えて、
貯めておいた電気でヒートポンプを動かして冷めた部分を補う形で利用することにしたのだ。
この部分の蓄電にパーソナルエナジーを利用しようというのだ。

しかし温暖化問題を考えるなら、ガスよりバイオマスの方がいい。
だから我が家はペレットストーブを使うのだ。
木材カスを固めたペレットなら、燃やして出る二酸化炭素は、木が集めた炭素が出るだけだから持続可能になる。

私たちが手伝っているくりこまの山では、今木材の端材から作られた電気を売り、
熱を冷暖房に使おうとしている。
これなら持続可能な暮らしも可能になる。
エネルギーは一つに絞らない方がいい。
必要なところに適合するエネルギーを使うなら、最もエネルギー消費量を減らすことができる。

エコワンというリンナイのシステムを給湯に利用するのが、熱利用については一番良い方法だと思う。
今後も新たな仕組みに注目していきたい。