森を守って 健康長もち。「天然住宅」です。
こんにちは。田中竜二です。
先日、寺田本家さんに研修に行ってきましたので、報告します。
寺田本家さんは340年続く酒蔵で、米・米麹・水だけを原料とする伝統的な酒造りをしています。
今、一般に流通する日本酒の中には、醸造アルコールを添加したお酒は多く、他にも水飴、グルタミン酸ソーダなどを添加しているものなどもあります。酒造りに欠かせないアルコールを生み出すための酒母をつくるのにも、人工の乳酸菌、協会酵母を添加することもあります。コストや合理性を求め、日本酒は変遷してきました。
しかし、そういった時代の流れにとらわれず、真面目な酒造りをしているのが寺田本家さんです。先代寺田啓佐さんの代から「人の役に立つ酒造り」をしています。
写真は代表寺田優さん
酒造りの工程は大きく分けて3つ。
1、麹(こうじ) 2、酛(もと) 3、造り
酒造りのすべての過程で微生物たちの活躍が欠かせません。
寺田本家の酒造りの肝となる、酛(酒母)づくりでは‘蔵付き酵母’が活躍します。
蔵に住みつく微生物が酒母の発酵を促進させ、アルコールをつくり出すのに適した酵母を作りだしてくれるのです。この蔵付き酵母は一旦酒母室を薬品などで殺菌してしまうともうそこからは消えてしまいます。環境を整えてあげなければ、菌は住みつきません。
菌は「腐敗」にも「発酵」にも向かう可能性を持っています。腐敗を恐れ殺菌することは日常的におこなわれていますが、菌は人を成り立たせるためには必要不可欠な存在です。菌が発酵し生き生きと活動してくれれば免疫力が高まります。「百薬の長」と言われるお酒にはこのような菌が存在しているのです。菌が発酵へと向かうのに大切なことは、環境(場)を整えてあげることです。寺田本家ではあらゆるところで菌が気持ちよく働ける「場」づくりを実践しています。
蔵はよく見ると、柱は無垢の木、壁や杉の桶には柿渋を塗り、布は麻、麹室の内装も杉材です。また、敷地にも20mおきに炭素埋設をし、イヤシロチ化を図るなど、徹底的にこだわっています。
そして、何より微生物が喜ぶ場づくりに大切なのは、造り手の心です。
寺田本家では、酒造りを心を込めておこなっていることがよくわかります。
微生物に思いを馳せ、丁寧に、手間をかけて酒造りをしています。
マンガ「夏子の酒」で酒造りにおいて重要な心得としてこんな言葉が使われています。
「和醸良酒」。造り手の心がこもり、人と微生物が和を結ぶ場所でこそ良い酒は醸し出されるのです。
家も同じです。
建て主、大工、設計士はもちろん、林業者や製材所、その周りの人々までが気持ち良いと思える関係性の中で、心のこめて建てられる家こそ、住み心地が良く、健康で、幸せを運び込む住まいになるのでしょう。そのためのコーディネートを、愛情を持ってしていきたいと思いました。
合言葉は「和醸良家」です