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第26回 次の世代の住まいとは

時代は変わる

 天然住宅は300年をめざして建てているので、時代が変わったら合わなくなる建物であっては困る。よく言われるのが「2020年の次世代省エネ基準」だが、そんなレベルの問題ではない。省エネになってもシックハウスでは意味がないし、そのために「24時間換気」なんかでわざわざ電気を消費して冷たい外気を取り入れてたら、何をしてるんだかわからなくなる。ばかげた建築基準に合わせようなんてチャチな話ではなくて、インフラそのもののが変更されることを見据えた建築だ。

 たとえば今の天然住宅では、将来的に電気やお湯を自給することも含めて考えている。以前に書いた通り太陽光発電で電気を自給すると、冬場の電気が心細くなる。冬場の日の短さともうひとつ、大きな要因となっているのが「ガス給湯器の凍結防止装置」のヒーターの莫大な電気消費なのだ。だから凍結防止が働かないように給湯器は室内設置にしたいし、室内の空気を汚さない「FF式」でないと困る。そうでない品を設置してしまった場合、そのときになって給湯器ごと取り換えなければならないかどうか悩むことになる。実際にそうした事例があった。いち早くこちらが気づいていればと思うのだが、その家ではメーカー問い合わせたところ、「スカイブレンダー」という装置を加えれば足りることがわかった。でも最初から気づいていればと思う。

一家に一電気室

 将来的に必要になると考えているものの代表格が「電気室」だ。電力会社に電線をつながなくなるのであれば、自宅内に設置するスペースが必要になる。我が家ではわざわざ軒を伸ばした先に一部屋作り、そこに電気自給に必要な「パーソナルエナジー」を入れるようにしている。「装置のために一部屋?」とも思うだろうが、これまでは自宅で公害を出さないために遠くに火力発電所や原発を押しつけてきた。あげくに原発が事故を起こし、十数万人の人たちの住まいを奪い、将来に渡って膨大な数の疾病を発生させる。

 それより自宅内で電気自給して、自己完結できる仕組みにした方が良いと思う。他に迷惑を押しつけず、電気の大原則である「Point of Load(電気消費の近くで発電する)」も叶って効率が良 くなるからだ。それが可能になる技術が出てきた今、今後の住宅には電気室があるべきだと思う。
電気室を設けた
建築中の田中優宅。
写真の家の左の方にあるのが電気室。

住んでから考えよう

 同様にペレットストーブを用いるために、寒い北欧などではペレット部屋があったりする。冬の始めにペレットで部屋を一杯にして、そこからストーブに供給していく仕組みだ。我が家でも考えたが、「待てよ、ここは北欧ほど寒くないし断熱性能も十分にある。ストーブそのものの利用が少なくなりそうだから、一冬様子をみてから考えよう」と様子見することにした。いずれは電気自動車を自宅の電気で走らせ、下水も敷地内で処理できるようにし、ガス燃料も自宅で賄えるようにしたい。

 その器となる長寿命な家なのだ。だからこそ将来を見据えた住宅でありたい。小さな家にしたのも同じことだ。断熱すべき部分は人の居住空間だから、そこだけ断熱すればいい。モノを置くためのスペースには断熱は要らない。もしモノが溢れるなら、捨てるか、断熱なしの部屋を建てればいい。その最小部分の居住スペースを建てたのだ。もしもう一世帯住むのなら、まだまだ土地に余裕があるのでもう一軒建てればいい。家造りはこれで最後ではない。住まいは日々進化できるため余白があった方がいい。
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