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第66回 おカネに依存しない仮想通貨

人気アプリ「メルカリ」

 前回、合理的な支出にしていくために、住宅費を不要にし、光熱水費をなるべく自給し、その上でさらに自営することで必要経費を除いてしまうと、年収400万円を前提としても、年収140万円で実現できるという話をした。この話はそこで終わりではない。さらに続けて地域通貨のような仕組みの導入を考えるのだ。

 このヒントを得たのは人気アプリである「メルカリ」の仕組みだった。メルカリは主婦層に絶大な人気のあるアプリで、子どもが大きくなって着られなくなった服を出品して売り、逆に大きめの子ども服を購入するような形で利用されている。バザーやフリーマーケットのような生活用品の交換だ。違うのは価格だ。バザーなどでは10~100円程度になってしまうものでも、きちんと正当な価格で販売できる。むしろバザーで売られる価格が投げ売り価格になってしまっていることの方に問題があるのだ。お中元で届いた数千円のものを、百円で投げ売りする必要はないのだ。

 しかもメルカリでは、売った資金をポイントとして残しておいて、そこから他の商品を購入することができる。すると振込手続きも、手数料もなしに購入することができるのだ。通常の取引の手数料10%は通常通り売り主から取られるが、買い手はポイントで買うなら購入するだけでいい。この仕組みを地域でしたいと考えたのだ。
メルカリ

メルカリの弱点

 メルカリの弱点は郵送費だ。売ったものを送るのは売り手の負担だ。だから300円で売れたとしても30円は手数料で取られた上に、郵送費まで負担しなければならない。一番安いのはクリックポストだと思うが、それでも164円かかる。すると正味の利益は106円になってしまう。ところが地域内で実現できたとすれば、地域で直接やり取りすればいい。匿名希望なら、地域の人のお宅をポストにして、そこでやり取りすれば直接の関係はないままのやり取りもできる。

 しかもメルカリを調べてみると、資金決済法(通称「プリペイドカード法」)の適用がされていない。これはおそらく売買代金の資金は単なる「預り金」として処理し、そこからサービスで他の人の預り金へと移動させているのだろう。これをそのまま真似するのは多少リスクがあるが、別な逃げ道もある。資金決済法は、資金合計額が3月末、9月末で1000万円を超えなければ、法の適用除外になっているのだ。地域でするなら小さな方がいい。1000万円を超えない範囲でしていれば、どちらにしても適用除外となるのだ。

地域版メルカリ

 こうしてぼくの住んでいる地域で地域ポイントを始めることにした。岡山県和気町なので「わけあい」という名前にした。これで実際には地域を活性化できる仕組みにしたいと思っている。たとえば地域の自給農家が農作物を余らせているならそれをポイントで買い、助っ人が必要ならポイントで手伝ってもらう。かつて実現したかった地域通貨を、これでしてしまおうと思う。そうすれば地域内でモノとサービスが循環する。その分だけ地域経済は活性化するからだ。

 こうして日用品の他、野菜なども手に入れられたらおカネに頼らない暮らしはさらに広がることになる。それがやりたいのだ。
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