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第125回 天然住宅はベニヤ板(合板)を使用しない3

ユニットリスク

こうして「普通の」家にはベニヤが使われている。

すると普通に家を建てて住むことは環境破壊的だ。
成長の早いスギで建てたとしても、利用できる期間はスギが成長する50年にすらとても及ばないからだ。
持続可能な暮らしを目指すならば家は持たない方がいい。

加えて健康面でも問題だ。
ベニヤはタテヨコ直角に接着剤で貼り合わせたものだから、否が応でもホルムアルデヒド入りの接着剤を使う。

2010年になって、アメリカFDA(環境保護庁)が「ユニットリスク」という
発がん発症率を示したリストが導入された。
それは化学物質ごとのの発がんリスクを「がんの種類」ごとに示したものだ。
日本の住宅に広く使われるホルムアルデヒドを、
実際の日本の通常の住宅に当てはめた結果は「269人に1人 」が発がんするという結果だった。

二人に一人ががんで死亡する日本で、どれほどの命がシックハウス症候群で失われているのだろうか。
ユニットリスク

化学物質過敏症

もちろんがんでなくても深刻な化学物質過敏症に陥る人もいる。

せっかく手に入れた家で病気になるのは本末転倒ではないか。
これが低価格で建てる住宅を選んだことの結果なのだ。

さらに木材そのものも120℃もの高温で乾燥させることで、
木材の持っていた健康に貢献するとされる成分を失わせている。
材が歪まないように、カビが生えたり虫が発生しないようにと、
プラスチックのようなものに変えられているのだ。

その結果、家に使われる殺虫剤のせいで化学物質過敏症を発症したり、
ぼけてしまったり、流産したりしている。

まさかそのリスクを受け入れながら選択した人などいないだろう。
つまり、リスクを知らずに建築してしまったことの結果そうなってしまったのだ。

若年性アルツハイマー?

ある化学物質過敏症の方のお宅へ邪魔したことがある。

その人は化学物質過敏症とは知らず、自分の事を若年性アルツハイマーと思っていたという。
というのは記銘力が弱くなり、何度聞いても記憶できない状態になっていたからだ。

それに気づいたのも先生に持参するものを聞き、
その受け答えから自分が何度も同じことを聞いたことに気づいたからだった。
以来彼女は友人たちに知られないようになるべく連絡を取らないようにしたという。

しかし数少なくなった友人の一人が
「テレビでやっていたけれど。あなたの症状は化学物質過敏症なのではないか」と教えてくれたのだ。
『北里病院』でしか調べられないとメモし、診断を受けてみた。
結果はその通りだった。
「出せる薬はない、今住んでいるマンションを出るしかない」と言われた。

しかし、ある程度回復した後から気づいたことがある。
悪化したのは引っ越してからではなく、
引っ越す時に一時的にすんだアパートで「誰が住んでいたかわからないから」とバルサンを撒いてからだった。
以来発病した。彼女の化学物質に対する許容量をそのときに越えてしまったのだろう。
人にはそれぞれの許容量があって、それを越えたときに発症するからだ。

この病気の兆候がありそれでも健康であるということは、許容量をまだ越えていない状態を指すことになる。
天然住宅はそれを「越えないための住まい」であるだけだ。
発症してしまった後、特別回復させるものではない。そこにはまた別の対処の仕方が必要になってくる。

でも、天然住宅に住み始めてからの彼女は、ほんのわずかずつ快方に向かっている。
少なくとも本人の言葉によれば。
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