井上の読書日記「丁寧に暮らしている暇はないけれど」一田憲子
わたしがエッセイを好きな理由
暮らしまわりのことが書かれた本を読むのが好きです。
暮らしの中で抱くモヤモヤを、少しでも晴らしてくれるような、例えばちょっと家事がスムーズにはかどりそうなアイデアだったり、気持ちを上向きにしてくれるような日用品や雑貨だったり、そういうものを見つけると嬉しくなるし、さっそく試してみたくなります。
でも、誰かにとってベストな選択が、自分にとっては必ずしもそうではないということも、年を経るごとにだんだんと分かってきました。そこが難しくもあるし、おもしろいところでもあるんだよなぁとも。
たとえば誰かは、「食材の宅配が暮らしをまわす上でとても役立つ」とすすめます。
いっぽうで別の誰かは、「思いきって、宅配をやめた」と言います。
どちらも自分の暮らしをより良くするためにとった行動には違いないけれど、結果的には異なる答えに辿り着くのです。
それは、その人自身の性格や生活スタイル、仕事や家族や住む場所が異なるからかもしれません。ライフステージの違いもあるかもしれないし、今、何を大切にしたいかも関係しているのかも。
でもどちらにも共通しているのは、「自分自身をとことん掘り下げ、自分の心の声に耳を澄ませ、今の自分にベストな答えを出した」ということなのだと思います。
そうやって掘り下げることを諦めず、きれい事だけではない、葛藤や迷いや試行錯誤の末の「今の答え」にたどり着くまでのプロセスや決断に、私自身、勇気や希望をもらっています。
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だからでしょうか。さまざまな本が出版される中で、とりわけ好きなのが、著者自身の経験や考えが詰まっているエッセイなんです。
結論以上に、そこに至るまでにどんなプロセスを経たり、心の動きがあったのかが知りたくなります。
哲学なんて書くと大袈裟だけれど、その人の内側にある、その人自身をつくってきたもの、つくりゆくもの、そういう出来事や心の揺れに興味があるのだと思います。
▲建主さまが送ってくださったお米と野菜。
最近また、食べるものが人をつくるなぁと実感するようになりました。
別の建主さまのススメでこの夏から生活クラブの食材を購入するようになりました。
宅配食材には「空き箱どうするか問題」や「食材使い切れるか問題」、「毎週ちゃんと注文できるのか問題」など何かと立ちはだかる壁があり、加入までにだいぶ躊躇したのですが(これまでに何度も挫折経験あり笑)、「食の安全」をもう一度ちゃんと考えたくてはじめました。体に良いばかりでなく、おいしい!からこそ、続けたいなぁと思います。
ちなみに曲げわっぱの2段弁当は娘のもの。小学一年生の頃から、この量をぺろりとたいらげる、食いしん坊です。
一田憲子さんの本、ここがすきです
そんな私が最近手にする機会が多いのが、一田憲子(いちだのりこ)さんの著書です。
一田さんは、「暮らしのおへそ」や「大人になったら着たい服」など、編集者・ライターとして多くの書籍を手がけてらっしゃいます。
一田さんの本は、いつも私に「視点の発見」をくれます。
ご自身のことを書く本もあれば、取材を通して、誰かのことを書く本もある。どちらであっても、自分の視点で、自分がどう感じたかが描かれています。
取材する相手の話を聞きながら、素直に感動したり、驚いたり、ふむふむと感心したりしている一田さんは、現在50代半ばだそう。年齢を重ねても、好奇心を持ち続け、人の話に心を寄せ、そこで見聞きしたことを自分の中に落とし込み、思考を熟成させ、疑問を消化しながら、自分自身の価値観を再定義したり、再構築したりする。
そのような過程や結論を、分かりやすく素敵な文章に乗せて表現されている。
本当にすごいなぁ!と、大きな憧れと尊敬の気持ちを抱いています。
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「丁寧に暮らしている暇はないけれど ~時間をかけずに日々を豊かに楽しむ知恵~」という書籍は、去年の春に出版されました。
前書きには、「面倒くさがりの私が、毎日時間に追いかけられながら、『それでも』と暮らしを楽しむために普段やっていることを綴りました」と書かれてあります。
一田さんにとっての「暮らし」は、世の中に広がるさまざまな世界を、毎日の中に落とし込み、自分のものにしていく場、なのだそうです。
時にビジネスの話は掃除の能率へ、素晴らしいアートはティータイムのひと時へと。
そう考えると、政治も経済もアートも自然も、全部が自分の暮らしを作ることにつながっているんですね。
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面倒くさがりで、日々に余裕なんてまったくないけれど、できるだけ心地よく、笑って日々を過ごしたいと願いながら、そのためにできることは何かと自分なりの答えを、時に切実に考えながら今日も何とか暮らしている。そんな私にとって、一田さんをはじめとする、自分より少し先を生きる諸先輩方の存在は大きく、彼女たちの生き方に、健やかさや軽やかさを見つけては、いつか私もそれらを纏える人になりたいと願っています。
「暮らし」には正解も間違いもない。だからおもしろい!
地続きの人生の旅路をさらにおもしろいものにすべく、時に内省を繰り返し、自分の「ものさし」を作りながら、日々を過ごしていきたいです。
▲おそらくこれまでの人生で一番大きな買い物だった「すまうと」のソファ。背もたれは、アオダモでできていて、適度にしなってくれるので座り心地も抜群。目にするたびに「いいなぁ」と見惚れる、日々の暮らしの風景に(このソファが)在るだけでもうれしいんです。お昼代をケチケチしながら、時にこんな大物をえいやっと買ってしまいます(笑)個人的にとても良い買い物でした。
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