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「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ

わたしを離さないで
日の名残りに続いて、カズオイシグロの「わたしを離さないで」読了しました。

映画やドラマにもなっているようなので、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、
主人公のキャシーは、「提供者」と呼ばれる人の世話をするヘールシャム出身の「介護人」です。
キャシーの語りで、話が進み、だんだんと真実が明かされていきます。

そして私がこれから読みはじめる皆様に一番お伝えしたいことは、
「ヘールシャム」を絶対に検索しないでください!ということです。

上で、何気なくヘールシャム出身と書きましたが、
ヘールシャムは地名ではありません!実在しません!

序盤、キャシーはそのヘールシャムという場所で日々を過ごしているのですが、
ヘールシャムについて直接的な説明はなく、しばらく進んでいきます。
私は、イギリスの地名なのかと思い、軽い気持ちでググってしまったのですが、
かなり後悔しています。
一番上に表示されるウィキペディアに重大な真実が書いてあるので、お気をつけください。
ぜひ、何も知らずにドキドキして読んでいただきたいです。



小説の中で「すべての遺失物が集まる場所」として、ノーフォークというところがでてきます。
これは、地名です。ご安心ください。

先ほどまでここにあったはずのものが、なぜかないときがあります。
誰も盗んだりしていないのに、確かにそこに置いたのに、どこを探しても、なくなるはずもないものが、なくなってしまうことが。
失ってしまったもの、それらはノーフォークに集まっているのです。

本を読んだ後、解説などを読んで知ったのですが、
イギリスの「ロストコーナー」つまり「忘れられた土地」とかかっていたみたいです。
それを子供たちのとらえ間違いか冗談が言い伝わってこのように解釈されているということみたいです。

でもこのとらえ違いが、キャシーにとってとても大切な役割をすることになるというところが乙です。

村上春樹の分電盤のように、サリンジャーのライ麦畑のキャッチャーのように、
人には、ノーフォークのような場所が必要なのです。



また、この小説のテーマが現在においても、新鮮なテーマであり、
その点においても読む価値があります。
ありえない(あるいはもうすでにある?)設定の中で、
細かな人間関係の描き方に、作家の底力を感じさせます。
全体を通じて、せつなくて、むなしい、重い空気感があり、
それが読後も、心にずっしりと残ります。

そしてそのテーマこそ、ヘールシャムを検索するとすぐにわかるテーマなのです。
ぜひ、事前になんの情報も入れずに読んでください。
ここまできて言うのもナンですが、このブログもできれば読まないほうが良いです。



それから、ぼーっとしながらカズオイシグロを検索すると、
間違ってノゾミイシグロを検索してしまうこともあります。
こちらも世界的に有名な方ですが、併せてお気を付けください<(_ _)>
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